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土 水 火 風 人 レンガを作る

レンガ工場内に足を踏み入れると、そこには絵柄模様を散りばめた色とりどりの民族衣装サリーを身にまとった
大勢の女たち、そして原色が鮮やかな化繊のワンピースを着た少女たちが、頭の上にうず高くレンガを積み重ね、
列をなして裾をはためかせながら小走りで働いていた。蒸せかえる暑さのなかで、深く掘り下げられた
巨大な窯の底にしゃがみこみ、焼きあがったレンガを摑みとって頭上に運ぶごとに、レンガからこぼれ落ちる砂埃が
もうもうと舞い上がり、窯のなかは霞がかったように薄ぼんやり煙っている。女たちは顔も腕も胸元も、
優雅に着こなしたサリーまで、全身象牙色の粒子に覆われてしまう。砂を被り、汗が筋となって流れ落ちる
褐色の女たちの姿は、なんともいえず美しかった。 同時に、現代でもなお時代錯誤的な、古代の奴隷さながらの
厳しい労働に酷使されているかと見まごう大勢の人々の 群れを目の当たりにして圧倒させられた。
我々先進国の産業では、過去に重労働を要したものはことごとく機械化され、はるかに容易になった。
一面において、利益追求の効率化が図られた結果、人間は苦役からは免れ、なおかつ生産性は 向上している。
しかし、インドではいまだに古来と変わらず、あるがままの自然と人間とでもって延々と生産を成し遂げる、
労働の時代が存続している。人間の手足と頭は、物を形作り、その物を運び、その産業を支えている。
この地で、レンガを作りあげる原料は今もって、土と水と火と風と、そして人間そのものの力とからなる。
(あとがきより)

土 水 火 風 人 レンガを作る
著:笠原コレ
上製本 変形(297×297) 164ページ
定価:16500円(本体:15000円+税)
ISBN978-4-86338-249-7

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